いよいよアタック日となりました。
天気は良さそうです。が、体調が心配です。
かといって、ここまで来てやめます、はないでしょう。
▲朝4:30、まだ薄暗い中、二股のBCを出発。風もなく、それほど寒く感じない。
▲前回は崩壊した雪渓に阻まれ難儀しましたが、今回はずっと繋がっているようなので
問題なさそうです。
▲と思っていたらやはりクレバスがありました。まずはK会長がアタックするも
蹴りこんだアイゼンがズルッと滑って断念。コワ~
続いて自分がダブルアックスで挑戦。思ったほどは距離はないので、落ち着いて
乗っ越せば大丈夫でした。お二方は念のためロープで確保しクリア。
▲単調な雪渓を詰めていくと三ノ窓への三叉路へ来ました。
前回は間違えて右折してしまった場所です。今回はまっすぐ進みます。
▲だいぶ登ってきました。ここからBCは見えません。
▲詰めの最後はガレ場になります。さすが悪名高い池ノ谷、ここが悪いこと。
大きい岩も含め不安定な状態で積み重なっているだけなので、うっかり足を滑らせる
とガラガラと大きい音を立てて雪崩ます。。慎重にそ~っと足を運びます。
▲7:00、三ノ窓に到着。五竜岳(左端)と鹿島槍(ヘルメット右)が遠望できる。
右端に見える岩壁がチンネ左稜線。
▲雪渓が取付き付近まで繋がってそうだったが、先行するK会長が雪渓と岩壁の間に
下りたので、やむを得ず下りるが、足場が悪く怖いこと。
急峻であるし、ガレているので緊張を強いられる。
▲水場があったので水を補給。
チンネは南面になるので、三ノ窓を越えてからは太陽にさらされる。
自分の体温も上がってきたため、小休止します。
▲やはり雪渓が繋がっているように見えるので、自分は雪渓コースへ変更。
あの逆4の字のところが取付きらしい。
しかし、日射が厳しい。。今日1日身体が持つか心配になってきました。
▲K会長たちは雪渓と岩壁の間を進みます。
雪渓も傾斜があるので油断できませんが、しっかりピッケルとアイゼンワークをすれば
ガレたところよりは簡単です。
進むと見事に取付き手前で繋がっており、安全に岩場に移ることができました。
▲人がいるところが取付きです。
左下から回り込み、右上すると取付きまでいけます。
▲9:00 1P目、フェース40mⅣ。最初のリードは自分です。
いつでも初っ端のピッチは緊張します。しかも結構壁が立っています。
残置ピンは豊富にあるのはいいけど、サイズが小さいものも多い。
しかし、やはり熱中症の影響で身体が暑い。。
この凹角からフェイスになるが、登っているうちに汗が出てきて
しだいに苦しくなってきた。終了点までもうすぐというところで
急に力が入らなくなり、まさかのフォール!
5mくらい落ちたでしょうか。ピンが効いてよかった。
Ⅳ級なんで簡単とはいえないけど、ホールドはあるので、落ち着いて
登ればそれほど難しいわけではない。
少し休んでから登りなおす。
終了点を作りながら少し休む。
池ノ谷の雪渓も問題なく登れたので大丈夫かと思っていましたが、
やはり太陽が出て気温が上がってくると熱中症の症状が出てきた。
この状況でリードするのは危険だと実感。
▲1P目終了点から。といっても木が邪魔で見えませんね。
▲やはり体調不良のままリードをするのは危険なので、2P目以降は
K会長にお願いすることにしました。
Ⅲ級のフェースはホールドも豊富。しかし、日射が厳しく暑い。
この上の広いバンドでピッチを切り、そこで急遽、登攀会議が!?
K会長が自分の登り具合を見て、この後の長いルートをいけるか
心配になったとのこと。
自分は念のためロープが張ってから登っていたのでゆっくりに
なっていたわけだけど、本調子でないのも事実。
でも、曖昧にして先へ登ってしまうと撤収も簡単でなくなる。
ここでK会長から「撤収しよう!」という言葉が。
ここまで来て私のせいで撤収するのは、皆さんに申し訳ないし、
私としても非常に残念である。
では、このまま登れるか、フォローとはいえ、Ⅴ級の核心もある。
南向きの壁なので日射を遮るものも少ないだろう。
症状が悪化して動けなくなったらもっと面倒なことになる等、
いろいろな思いが頭をよぎる。
場所が場所だけに 正直、戻る/進むが半々くらいの思いでしたが、
「休みながら行けば大丈夫です。」ということで進むことに。
実際、バンドの日陰で休憩していたら少し楽になった。
気を取り直して進むことにする。
▲3P目はバンドから衝立状のピナクルとフェースに挟まれた細長いテラスまでの短いピッチ。
そして、4P目フェース20mⅢ+。離陸が少し微妙でしたが、その後は問題なし。
▲5P目は草付リッジ歩き(40mⅠ)。
▲6P目フェース~凹角。
ここでまた問題が発生。といっても自分の体調ではないですが、リードのK会長が
ロープいっぱいだというのに、さらに登っていく。
やむなく、フォローの2人も登っていくが、だれも確保されていない状態。
どうやら適当な終了ポイントがなかったようだ。
ホントは凹角に入る前にピッチを切るべきだったのかもしれません。
▲7P目のリッジ50mⅣ。
背後に見えるのは、左からクレオパトラニードル、三ノ窓の頭、チンネの鼻。
厳しそうに見えますが、いざ登ってみると、確実なホールドがあって容易です。
ただ、動くホールドもあるので、確認することはキホンですね。
▲剱らしい景色。三ノ窓が見えます。だいぶ高度感が出てきました。
▲実は三ノ窓側にリッジの日陰ができるのでそこで休んでました。
核心が近いので、体調を整えます。
▲いよいよチンネの核心、鼻の全貌が見えました。
▲8P目のチンネの鼻、ハング~フェース(スラブ)~リッジ35mⅤ。
この核心部分をリードするためにきたというK会長。
慎重に、でも確実に登っていきます。
高さ自体は大したことはないと思いますが、なんというか威圧感があります。
この迫力が剱なんでしょう。
▲K会長、1つ目のハングを越え、2つ目にかかるところ。
リッジの途中でロープがいっぱいになり、ピッチを切りました。
左に見えるのはクレオパトラニードル。
▲私もフォローで登ります。
核心部はロープを張ってもらいましたが、幸いノーテンで登ることができました。
いつか体調が良いときにリードしたいものです。
▲このピッチで目的を果たしたK会長、MSTさんにバトンタッチ。
MSTさんは今年デビューですが、体力もあり、落ち着いています。
ホントは自分がやるべき役目なんでしょうが。。
▲9P目のリッジを登りきるとトラバースとなり、ロープの流れが悪くなる。
▲10P目。
ピンのあるリッジの右側を慎重にトラバースしていく。
切れ落ちていて高度感があるのでⅢ級とはいえ、コワイ。
▲どうやら終了点はあそこのようだ。ピナクルの林立する長いナイフリッジとなっている。
ずっとトラバース気味でロープが重くなるので、場合によってはもっと短く切った方が
良いかもしれない。
▲フォローで登るK会長。
16:00。だいぶ日が傾いてきた。急がねば。
▲ チンネの頭が見えた。いよいよゴールだ。
なんとか最後まで登攀できてよかった。でも、まだBCまで戻らないと
ならないので、最後まで気を抜けない。
▲16:10登攀終了!
最後はお約束のチンネの頭で記念撮影。これはMSTさん。
私は体調不良だし、不本意な登攀だったので今回はやめておきました。
▲ロープをたたんで、チンネのコルへ下る。
急ではあるが、踏み跡やハイマツもあり、比較的簡単に下りられる。
ここで行動食を摂り、登山靴に履きかえる。
▲16:50 チンネと三ノ窓の頭の間にある窓から池ノ谷ガリーへクライムダウン。
右手に見えるスリングで懸垂下降するパーティが多いようですが、
K会長曰く「時間がかかる」 まあ、確かに時間はかかってしまってます。
▲悪名高い池ノ谷ガリー。しかも下り口付近は急なので慎重に下ります。
うっかりするとガラガラと岩雪崩を引き起こす。
岩に体重をかけるときは引っ張るのではなく、押すように。
▲生きた心地がしなかった池ノ谷ガリーを何とかやり過ごし、三ノ窓まで戻ってきた。
あとは雪渓を下るだけです。
18:00アイゼンを着けて出発。
▲おっと、クレバスを忘れていた。
簡単にジャンプでクリアできそうでしたが、念のため、ロープで確保します。
▲後はひたすら雪渓を下ります。
登りよりはいいですが、すでに14時間行動で水も底をついています。
しかし、K会長の速いこと。あっという間にいなくなりました。
▲19:00 BCに到着。おつかれさまでした。
一時はどうなることかと思いましたが、無事に戻ってこれてよかった。
日が暮れると気温が下がり、雪渓上を吹く風が冷たい。
テントに入って夕飯を食べていると突然雨音が。。
雪渓を整地してテントを張りましたが、盛土ならぬ盛雪した部分が融けてしまい、
テントの端が落ちている状態なので、さらにそれがヒドくなるとイヤだなと心配に。
幸い雨は30分ほどで止み、その後は晴れていたので明日の天気も大丈夫でしょう。
しかし、天気が良すぎると私の体調では尾根の乗っ越すのに難儀しそうです。。
明日もまた核心がありそうです。